米労働省がアメリカの雇用状況を把握するために発表する米雇用統計は、FXの相場に大きな影響を及ぼすことで知られています。
米雇用統計が、世界一の経済大国アメリカの雇用情勢を示す統計指標という意味で重要なだけでなく日本市場を含む世界全体の市場に影響を及ぼす理由は、アメリカの影響力・金融政策・投資家の意図など様々です。
この記事では、米雇用統計とは?発表される指標の意味と発表日、米雇用統計の為替への影響とFXとの関係性、米雇用統計のトレードへの活かし方について説明します。
米雇用統計とは?発表される指標の意味と発表日
米雇用統計は、米国労働省が毎月第1金曜日に前月分の数値を公表しています。
発表される時間帯は、夏時間で21時30分、冬時間で22時30分です。
全米約15万の企業や政府機関より60万前後のサンプルを調査し、就業者数、失業率、賃金などの数値から、米国経済の状態を把握し、毎月の求人市場の状況を詳しく知る目的で実施しています。
特に重要な数値は、「非農業部門雇用者数」と「失業率」です。
非農業部門雇用者数とは、比較的雇用が安定している農業部門以外の産業における雇用者数の増減を知るための数値です。
前月比で増えているかどうかで、景気の善し悪しを判断することができます。
アメリカの景気が良いと、サービス業や鉱工業などで雇用者が増え、賃金を個人消費に充てることができるなどと判断され、株価が上昇する要因になります。
失業率は、アメリカ国内で16歳以上の働く意欲がある失業者数が、全労働力人口に占める割合を示す数値で、失業率が高くなると消費が減少するなどと判断されます。
これら二つの指標が主に注目されますが、より細かく知るために、建設業就業者数・製造業就業者数・小売業就業者数・金融機関就業者数・週労働時間・平均時給などを参考にしても良いでしょう。
米雇用統計の為替への影響とFXとの関係性
米国雇用統計は、FX市場で大きな影響を与える重要な経済指標となります。
なぜなら、FX市場では世界各国の為替レートが取引されていますが、米国の雇用統計が公表されることにより、米国経済の状況を反映した為替レートの変動が起こるためです。
米国一国のみの雇用統計が世界全体の為替に影響を与える事実は、FXをやっているかたには常識です。
戦争や異常気象、天災、クーデターなどの政変によりアメリカ以外の特定の国の状況がFX市場に影響を及ぼすことはありますが、毎月の数値がFX市場に影響を持つのは、米雇用統計ぐらいでしょう。
アメリカの経済規模は世界全体のGDPの約20%を占め、その約70%が個人消費です。
つまり、米雇用統計の数値は世界経済全体の約14%を左右する重要な数値で、雇用が増えると景気が良くなり、個人消費も増えるなどと判断されます。
これは、世界中の投資家が注目する要因ともなり、株価や先物市場などFXを含む投資全般にまで影響を及ぼします。
米雇用統計がFXに影響を及ぼす理由を、米ドル円の通貨ペアを例に解説します。
発表された雇用統計で失業率が上昇したとすると、アメリカ国内における個人所得・個人消費が減少します。
そうなると、FRBは市場に出回るお金の総量を増やすために政策金利を引き下げます。
市場金利が下がると、投資家が米ドルを保有するメリットが薄くなり、それが米ドル安につながります。
為替は二つの通貨の関係のため、米ドル円のペアだと米ドルだけでなく日本円の動きも考慮する必要がありますが、米雇用統計発表時には、アメリカ市場が為替市場に与える影響の大きさを考えると、特に米ドルに注目すべきでしょう。
もっと言えば、アメリカの雇用統計は世界の基軸通貨である米ドルの価値に直結し、アメリカの金融政策の肝心な部分を占める、とも考えられます。
米雇用統計のトレードへの活かし方
米雇用統計は、トレードに有効に活かすことが可能ですが、その一方で大きな損失を被る可能性もあるハイリスクハイリターンな投資方法です。
米雇用統計発表直後は、スプレッドが大きく広がり、チャートが大きく乱高下する可能性があるため、初心者が安易に高いレバレッジをかけてトレードすると、一気に資産を失ったり、追証を請求されたりすることになるため、注意が必要です。
さらに、雇用統計のみをねらったトレードをくり返すと、海外FX会社から出金拒否されることもあります。
米雇用統計を活かしたトレードで勝つには、事前に経済アナリストなどの分析を参考にしますが、その分析が当たるとは限りません。
また、発表直後に激しく上下動をくり返すことが多いのも米雇用統計の特徴で、損切りの連続であっという間に資産を失う危険性があります。
雇用統計では、欲を出しすぎず、一定の利益幅が出たら利確するなど事前に決めておきましょう。
負けた分を取り戻そうと、無茶なトレードをくり返すのは厳禁です。
また、よりリスクを軽減させるには、米雇用統計発表直後ではなく、しばらく経ってからトレードする方法もあります。
ある程度トレンドができたときに、トレンドフォローで入ったり、逆に折りかえしの動きに反ってエントリーしたりなど、急激な値動きがやや落ち着いた段階を見計らうと、リスクを軽減できます。
ただし、この時間帯には取引量が急増するため、サーバーエラーや、スリップページが発生して注文したい価格と大きく異なる可能性があります。
米雇用統計発表直後の激しいチャートの値動きに慣れるために、デモ口座を活用して何度もシミュレーションをくり返すと良いでしょう。
また、米雇用統計は、FOMC政策金利やオーストラリアの雇用統計に特に大きな影響を及ぼし、そのチャンスを活かすのも有効です。
FOMC政策金利は雇用統計を踏まえて決定されます。
オーストラリアの雇用統計は米雇用統計との連関性が深く、豪ドル円の通貨ペアのトレードに大きなチャンスがやってきます。
まとめ
米雇用統計とは?発表される指標の意味と発表日、米雇用統計の為替への影響とFXとの関係性、米雇用統計のトレードへの活かし方について見てきました。
内容をまとめると以下のようになります。
- 米雇用統計とは米国労働省が毎月第1金曜日に公表する数値
- 米雇用統計発表がFXに大きな影響を及ぼす
- 米雇用統計を活かしたトレードはハイリスクハイリターン
米雇用統計は毎月第1金曜日、日本時間の夜に米国労働省が公表する数値で、FXに大きな影響を及ぼします。
この米雇用統計が発表された直後にはチャートが大きく乱高下する可能性が非常に高く、大きく稼ぐチャンスですが、FX初心者が安易に手を出すと、全ての資金を失う可能性も高いです。
米雇用統計の結果やその後の為替の値動きを予測することは難しく、確実に勝つ方法はありませんが、値動きの特徴や傾向をデモ口座などを活用して学びながら、欲を出しすぎずに稼ぐのが良いでしょう。