FXを行う上で、アメリカの景気の動向を知ることは勝率に直結します。
アメリカの景気を知る上で、特に重要で多くのFXトレーダーが参考にしているのが、「先行指数」です。
この記事では、米景気に先行すると言われる「先行指数」一覧と主な内容、FXトレードへの活かし方について紹介します。
米景気に先行すると言われる「先行指数」一覧と主な内容、FXトレードへの活かし方
アメリカの経済団体や労働組合で構成される全米産業審議会は、アメリカの景気を表す指数として、10種類の先行指数と4種類の「一致指数」、7種類の「遅行指数」を発表します。
このうち、一致指数は景気に呼応する指数で、遅行指数は景気の動向よりも遅れて出てくる指数です。
それらよりも、FXトレードにより役立つのは、景気の先行きを予測できる先行指数です。
先行指数は、全米産業審議会が原則として翌月15日前後に発表します。
先行指数は、景気のピークに対して約10か月の先行性、景気のボトムに対して約4か月の先行性があります。
3か月連続で前月比プラス、もしくはマイナスとなると、景気が転換するとされますが、的中するかどうかは五分五分程度です。
とはいえ、予想と大きく異なる可能性は低いため、FXの大まかな方針を立てるのに役立ちます。
先行指数は、製造業の週平均労働時間・週平均失業保険申請件数・消費財新規受注・入荷遅延比率・非国防資本財受注・新規住宅着工件数・S&P500種株価・実質マネーサプライ・長短金利スプレッド・消費者期待度指数です。
製造業の週平均労働時間
アメリカ国民のうち、非農業部門の労働者の週平均労働時間です。
日本などと比べるとアメリカでは成果主義があるため、景気により労働時間が変化しやすく、先行指数の中でも特に変動が大きいのが特徴です。
アメリカでは、平均賃金が高くなっている反面、労働時間が低く抑えられており、景気の転換が起こる可能性があるため注意しましょう。
週平均失業保険申請件数
アメリカの失業者が、初めて失業保険を申請した件数です。
失業者の増加は、アメリカ企業のリストラや人員整理が進んでいることや、失業による家計の切り詰めで消費の低迷にもつながります。
アメリカの失業保険申請は、2022年までは失業が少なく、また再就職もできていたことから低い件数でしたが、2023年に入ると増加傾向が見られ、今後の動きを見ておく必要があります。
消費財新規受注
アメリカ国内における、企業の耐久財の新規受注を集計した指数です。
具体的には、自動車や家具、航空機など耐久年数が3年以上の物が耐久財となります。
速報性が高く、約4,000社の出荷・在庫・新規受注額・受注残高の統計なため信頼度は高いですが、受注当たりの金額差が大きくなることに注意が必要です。
入荷遅延比率
米サプライマネジメント協会(ISM)が毎月公表する景気指数の「米ISM製造業景況指数」は、新規受注・生産・雇用・入荷遅延・在庫の5項目で構成されます。
これら全ての項目が重要な意味を持ちますが、先行指数として特に注目されているのが、入荷遅延比率です。
入荷遅延比率は、原材料などの入荷に関して、企業の担当者にアンケートした結果を指数化したもので、入荷がスムーズであれば景気が活発、逆に入荷が滞っていたら景気が停滞していると考えられます。
非国防資本財受注
非国防資本財受注は、上記の消費財新規受注のうち、国防総省による受注製品を除いた指数です。
除く理由は、国防に関する物は、景気の動向とは直接関係ないとされるためです。
さらに、変動が激しい航空機を除く非国防資本財受注は、先行指数として注目です。
新規住宅着工件数
アメリカ国内で1か月間に建築された新規住宅の着工件数を、米総務省が公表する数値です。
同時期に発表される住宅建設許可件数と合わせて分析すると、より正確な先行指数として役立ちます。
住宅の新規建築は、家具や家電などの消費意欲を刺激するため、中古住宅販売件数よりも景気への影響は大きいと考えられます。
一戸建てと集合住宅に分かれており、一般的に一戸建ての方が景気の良し悪しを探りやすいです。
S&P500種株価
アメリカの株価を示す指数はNYダウやNASDAQなど多くありますが、代表的なアメリカ企業500社の時価総額を加重平均した指数、S&P500種株価は特に先行指数として注目されます。
S&P500種株価は、アメリカ株式市場の約80%もの時価総額の比率を占めています。
特に、AppleやMicrosoftなど情報技術産業の比率は高く、全世界にも進出しているため、それらの主要企業の株価を探るだけでもFXトレードの参考になります。
実質マネーサプライ
実質マネーサプライとは、名目マネーサプライから物価変動による変動を除いた指数です。
アメリカの実質マネーサプライは、現金や預金などのM1と、M1に加え貯蓄預金・小口定期預金・MMFなどを加えたM2があり、M2の方がより通貨の動きを知ることができます。
アメリカのM2は、2020年に記録的な伸びを示しましたが、同年12月に対前年比1.3%減となり、1960年の統計開始以来はじめての減少となりました。
その後、FRBによる金利引き上げによる金融引きしめにより、実質マネーサプライは低く抑えられていますが、伸び率が下がっているだけで依然として高い数値にあり、その反動があるとFXのチャートが荒れる可能性があります。
長短金利スプレッド
長短金利スプレッドは、長期金利と短期金利の差で、通常は長期金利が短期金利を上回りますが、短期金利が長期金利を上回ると注意が必要です。
短期金利が長期金利を上回る状態を「逆イールド」と言います。
逆イールドは、金融不安や政策の急変などにより短期金利が急騰した時に生じやすいため、景気が急激に悪化するサインとなる可能性があります。
消費者期待度指数
アメリカの消費者が、現在と将来に関する景気の期待度を、5,000世帯へのアンケートをもとに指数化したものです。
アメリカの個人消費は、対GDP比で約70%を占めているため、世界全体の景気にもつながるほど重要です。
消費者期待度指数の調査開始年にあたる1985年を100とし、現在と半年後の景況感を全米産業審議会がアンケート調査した指数で、他の同種の指数と比べ信頼性が高いです。
2020年に100を大きく下回りましたが、2021年以降は100を上回り、低水準で推移しているため、この数値がアメリカ国民の素直な消費への意欲としてどのように動くかは、為替がどのように動くかを左右し、FXトレードへの参考になります。
まとめ
米景気に先行すると言われる「先行指数」一覧と主な内容、FXトレードへの活かし方について見てきました。
内容をまとめると以下のようになります。
- FXトレードに役立つ米景気に先行する先行指数は10種類ある
- 先行指数はFXの方針を決める上で役立つ
- 10種類の先行指数それぞれに特徴があり、自分のFXトレードに活かすことができるものを選ぶべき
米景気に先行する先行指数は、製造業の週平均労働時間・週平均失業保険申請件数・消費財新規受注・入荷遅延比率・非国防資本財受注・新規住宅着工件数・S&P500種株価・実質マネーサプライ・長短金利スプレッド・消費者期待度指数の10種類です。
これらの先行指数は、景気のピークに対して約10か月の先行性、景気のボトムに対して約4か月の先行性があるとされ、FXトレードの方針を探る上で活かすと、とても有効です。