海外FXでも、業者によっては個人口座のほかに、法人で口座を開設することも可能です。
海外FXで得た利益には累進課税が課せられるため、利益の金額によっては法人化したほうが税金がお得になるかもしれません。
この記事では、海外FXの法人口座の開設に必要な書類とメリット・デメリットについて紹介しています。
海外FXで法人口座を開設するメリット
法人口座を開設するメリットはいくつかあります。
- 節税
- 国民健康保険か社会保険のどちらか選ぶことができる
- 損失繰り越しが9年間になる
- 損益通算ができる
①節税
国内FXではどれだけ利益が出ていようが、税率は一律20%なのに対し、海外FXでは累進課税のため、(住民税も含め)最大55%もの税金がかかるようになっています。
所得税率の表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
上記の表に記載されているように、所得が1,800万円以上で住民税の10%を含めると、半分以上を税金として納めなければなりません。
義務とは分かっていても少々辛いですよね。
これは個人のトレーダーの場合の話で、法人化するとどうなるのか説明します。
法人化すると、上記のような税率になります。
- 個人・・・(500万円-30万円)×20.42%-42万7,500円=53万2,240円
(500万円-30万円)×10%=47万円
53万2,240円+50万円=103万2,240円 - 法人・・・(500万円-30万円)×15%=70万5,000円
上記の例の場合では、個人事業主の税額は100万2,240円、法人の税額は70万5,000円になりました。
個人事業主の場合は所得税×2.1%(復興特別所得税)と住民税で税額を計算します。
個人事業主での税率と比べると法人化することでかなり節税効果があります。
もう一点、法人化することで節税になるポイントがあります。
それは、「経費の幅が広がる」点です。
海外FXを始める上で必要になったもの・・・例えばデスクやPC、FX関連のセミナーの参加費用や交通費等を経費として計上することができます。
これは個人事業主も同じですが、法人の場合はさらに経費として計上できる範囲が広くなります。
例えば、社員の人件費や社用車の購入費、勉強会や意見交換会での飲食費なども、法人化すると経費として計上できます。
経費として計上できるものが増え、税の対象額が減ることで、節税になります。
②国民健康保険か社会保険のどちらか選ぶことができる(健康保険料の節約)
個人のトレーダーは国民健康保険ですが、法人では国民健康保険か社会保険のどちらか好きな方を選ぶことができるため、法人化すると保険料を節約できます。
③損失繰り越しが9年間になる
開業届を提出し、青色申告をすると損失繰り越しが3年間認められます。
FXが事業所得として青色申告ができるかは議論が分かれるところで、青色申告なしの場合は雑所得で損失繰り越しはできません。
しかし、法人の場合は9年間の損失繰り越しが可能になります。
④損益通算ができる
一つの法人でいくつか事業をしている場合、FXでの損益と別の事業の利益(損益)を合算することができます。
損益があった場合、合算することで節税効果があります。
海外FXで法人口座を開設するデメリット
法人化するデメリットは以下があります。
- 会社の設立費、維持費がかかる
- 利益を個人に自由に出金できない
①会社の設立費、維持費がかかる
会社は設立費だけ払えば良いわけでなく、運営していくには維持費もかかります。
会社設立にかかる費用は株式会社で約20~30万円、合同会社で約6~10万円ほどです。
会社の維持費(資本金1,000万円以下の場合)は、株式会社でも合同会社でも年間約50万円ほどかかります。
設立費用が安いため、最近は株式会社ではなく合同会社にする方も多いようです。
②利益を個人に自由に出金できない
法人口座は「法人」に帰属するため、FXの利益は会社の利益になります。
法人化すると「個人」として自由に使えるお金は会社から個人に支払う給料(役員報酬)です。
この役員報酬の設定金額は一年間変更したり増やしたりすることはできません。
役員報酬はボーナスという形で個人に出すこともできますが、これも金額を一年の最初に決めておく必要があります。
また、法人と個人は別人格なので、役員報酬以外で法人のお金を個人口座に出金した場合は「法人から個人への貸付金」となり、将来的には法人に返済する必要が出てきます。
ただし、法人化のメリットで紹介したように、法人化すると経費として計上できるものが大幅に広がり、法人名義で様々なものを購入することができます。
例えば、投資家仲間との飲食やキャバクラを接待費として経費で使えることもありますし、自宅を社宅として借りてほぼ全額経費とすることもできます。
仕事目的であれば、旅行は出張になり、旅費はすべて経費として計上でき、さらに日当まで出すこともできます。
また、急に現金が必要になった場合は、上述したように個人への貸付金として出金することも可能です。
ここで紹介した例を経費として計上するには、会社としての売上アップに貢献したと合理的に説明できる必要があり、税理士によっても見解が異なるので一概には言えませんが、「法人」としてお金を使う方法はいくつもあるので、実際に法人を設立し運営していくとデメリットと感じることはあまりないでしょう。
法人口座開設時の必要書類
個人口座は現住所確認書類と本人確認書類があれば開設できますが、法人口座を開設する場合は以下の書類が必要です。
- 登記簿謄本
- 設立定款
- 法人住所確認書類
- 代表者の本人確認書類(マイナンバーカード・パスポート・運転免許証等)
- 代表者の現住所確認書類
- 代表者決定書
- 本人確認書類と口座開設者(代表者)が一緒に写っている写真(IDセルフィー)
- 株主名簿(合同会社の場合は出資者名簿)
必要書類はFX業者によって異なるため、業者によっては一部必要のない書類もあります。
ほとんどの業者は上記の書類が揃っていれば法人口座の開設が可能です。
まとめ
海外FXの法人口座の開設に必要な書類とメリット・デメリットについて紹介しました。
内容をまとめると以下になります。
- 個人から法人化する最大のメリットは節税
- 個人から法人化するデメリットは会社の設立費と維持費がかかる
- 法人化する場合、合同会社のほうがコストは抑えられる
海外FXの税金は、個人事業主として青色申告をするか、法人化するかで税率や控除、損失繰り越しや経費幅など様々な点が変わってきます。
海外FXは原則雑所得で損失繰り越し不可、経費幅は狭めですが、開業届を提出し青色申告をすると損失の繰り越しが3年間可能になり、68万円の控除を受けることができます。
FXの青色申告は議論が分かれるところで、税務調査時にはリスクとなるので本格的にやるなら法人口座を開設するほうが賢明です。
海外FXの法人口座の開設は一部業者で可能ですし、口座開設後は個人と変わらず取引できるので、興味がある人は法人口座開設を検討してみてください。
法人化した場合、損失繰り越しは9年間認められ、経費幅は大きく広がります。
法人化すると年間約50万円ほど会社の維持コストがかかりますが、一般的に法人化のラインと言われる年収800~1,000万円の利益があれば節税額が維持コストを上回ります。
損失の繰り越しができることを考えると、それ以下の利益でもメリットがでてくることがあるので安定した利益が出るようになったり本格的に海外FXに取り組んでいるのであれば一度税理士に話を聞いてみると良いかもしれません。